大学教育再生プログラム(AP) テーマⅠⅡ複合型

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東日本国際大学   学生の学びを構造化して表現する言語の展開による卒業時の質保証の強化

テーマⅤ「卒業時における質保証の取組の強化」

事業期間:2016年度~2019年度

【取組の概要】

 狭義の知識だけではなく、それらの運用能力、コンピテンシー等の育成について、どのようにすれば学内で適切に検討し、学外と確実に共有・調整していくことができるだろうか。「~力」といった表現だけでは解釈の幅が広く齟齬が生じがちで、学生も含めた多様なステークホルダーと目標の共有は難しい。本学のAP事業では、ヨーロッパにおいて練り上げられてきたヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)の考え方の上に、ディプロマ・ポリシーに表現された学修の到達目標を「~できる」の形にした能力表現に分解、これにより学内外との目標の共有・検討を促進する。その際カナダのクィーンズ大学で展開されてきたICEモデルを利用し、以上の到達目標を各授業に埋込み、各授業が担う能力育成目標を明示、教育課程としての成果を調整することで、ミクロ・メゾ・マクロを繋いだ教学マネジメントを実現し、学生の学びの成果をディプロマ・サプリメントとして可視化する。

【取組のポイント】

➢学生が身に付けて卒業していくべき能力について、より確かな形で、学内、学外と共有し語り合うための、構造化された言語表現の開発
➢それらを利用した多様なステークホルダー(入学し卒業していく学生たち、保護者、就職先企業、地域等)との人材育成目標の共有と調整
➢学修の到達目標を、質的な段階・相を示すIdeas、Connections、Extensionsへと分解して明示する仕組みであるICEモデルを利用したルーブリックによって書換え、それによって学生たちの学びを構造化し、学びが深まる方向・段階を明示・共有することで、その深化を促進
➢教育プログラムが適切に機能しているかを検証するアセスメント体制と教学マネジメントを、以上の仕組みを利用し持続可能なコストで確立
➢在学中に体験し、身につけていったことについて、準正課・正課外も含めて可視化し、社会に提示するディプロマ・サプリメントの発行
【キーワード】
「学修の到達目標を表現する言語の開発」、「教学マネジメント」、「アセスメント」、「ICEモデル」、「ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)」

【人材育成目標】

 東日本国際大学は、経済学・経営学を学ぶ経済経営学部と、社会福祉を学ぶ健康福祉学部の二学部を有する。全学として、建学の精神である儒学、とくにその義の精神を根幹として、世界の平和と人類の福祉を基調とする経済学・経営学ならびに社会福祉学を学んだ「基礎的専門性を備えた学士」を養成することを目的とする。
 経済経営学部では、グローバル化が進展する一方で人口減少等の課題も重なる現在、多様な価値観がぶつかり合う中で、課題に対して立ち向かい活躍ができることを目的として、国内外のさまざまな背景を持つ人たちとコミュニケーションができる力を有すること、その中で自らの在り方に気づいてアイデンティティを確立し、新たに自らの人生を歩んでいくために必要なさまざまなコンピテンシーを付けることをめざしている。
 健康福祉学部では、多様な価値観が並立する現代において個に照準を合わせた福祉社会の実現を目指し、「自分らしく暮らす」「身体を健康に保つ」「こころの病気とつきあう」をキーワードとして学生を育成する。そのためには、単なる対話力にはとどまらない対話から当事者の問題や課題を掴む力を身につける必要があり、また、多文化共生の視点から異なる文化的背景をもつ人や社会に関心を持ち、多様な人々が共存できる社会の形成に積極的に関わろうとする態度の涵養が求められる。そうした力や態度を身につけた専門家を育成することを目標としている。

【教育上の課題】

 本学を構成する二学部に存在する異なる課題を、共有・協働して解決していくために、今回の事業は設計・実施されている。
 経済経営学部においては、留学生も含め多様なバックグラウンドを有する学生たちがおり、卒業後に社会の中で活躍していく姿も多様であるため、どのような形であれば、確実に学生や多様なステークホルダーと学びの目標を共有していけるかが課題となっていた。
 健康福祉学部では、資格養成課程として、一方で国家資格を取得できるだけの確実な知識の習得が必要ではあるが、他方で現場に出た際に、それだけでは本当に必要とされる福祉を行っていけないという問題意識があった。
 どちらの学部でも、学修目標を、着実に学生や多様なステークホルダーと共有することができる形で練り上げていくための仕組みが必要であったため、それを構築するべく、まず授業に埋め込まれていた能力の育成を可視化し、そこで足りなかったものを確実に教育課程に埋め込んでいくための言語・手法の開発を進めることとなった。
 以上の課題の背景には、さらに、現代の高等教育における一般的な課題が隠れている。つまり、教育課程全体としての目標すなわち相対的に抽象的に表現される学修成果のレベルと、各授業における具体的な到達目標をどのように繋ぐ経路を確立するかという問題があり、この課題の一つの解決を提案することも目指している。

【これまでの取組、実績・成果】

<取組> 
 育成されるべき能力について、それが発揮される状況についてのある程度の表現を伴う動詞表現として書き直して分解し、到達目標を共有するための基礎を構築した。その基礎の上に、教育課程の到達目標がうまく機能しているのか、卒業生も含む地域の多様なステークホルダーに対して、卒業生全数調査、就職先調査等の形で協力を求め、その結果から、各教育課程の到達目標・カリキュラムの検討を実施、それらを土台として各授業レベルで到達目標の再構築とそれに合致したアクティブ・ラーニングやPBL等の授業形態のいっそうの導入、評価手法の見直しを進めている。
 また、こうしたプロセスの一貫として運用される教学マネジメントは、教学システム上に、ICT支援システムとして実装が行われ、それを介して、学生の準正課・正課外も含む在学中の成果が、ディプロマ・サプリメントとして結実・可視化される体制が構築されつつある。
<実績・成果>
開発された言語表現を介して行われた就職先調査、外部評価委員会、卒業生・在学生への調査により、今後育成すべき能力が明確になった。
教育について地域からいっそう密な協力を得られている。
これらの成果に基づき、カリキュラムの調整、三つのポリシーの見直しを行っている。
ICEモデルを介して各授業の到達目標を見直すことで、名目上だけでなく、評価も含めて各授業での能力育成を明示的に埋込み、ミクロ・メゾ・マクロレベルの接続が強化されている。
アセスメント・ポリシーも策定し、アセスメントの体制が明確になりつつある。

【今後の取組の計画】

<取組の計画>
 開発した手法を着実に各授業に組み込み、教育課程としての質保証に繋げるため、モデル授業での分かりやすい実施例を蓄積していく。 到達目標の適切な言語表現がどのように専門分野ごとに異なっているかについて明確にすることで、本学の二学部の実践を改善するだけでなく、他大学へも転移可能なものとして練り上げ、また実習先・インターンシップ先とのコミュニケーションも、より密なものとしていく。
 高等教育機関が責任を持って発行できるディプロマ・サプリメントとは何であるか、地域の多様なステークホルダーと調整・改善のプロセスを進め、学生たちの将来に繋がるディプロマ・サプリメントを確立する。

【本取組における成果と社会へのインパクト】

●学修の到達目標を、動詞を介した能力表現(Can-do)に分解・構造化することで、教育課程レベルの能力育成の目標と、各授業の到達目標を媒介することを可能にする体制の一範型を確立する。
●能力表現バンクにより、大学における人材育成と学修の到達目標を、地域をはじめとする多様なステークホルダーと、これまでよりもさらに具体的に共有し、すれ違いの少ない形で検討できる。
●学修の到達目標の質的ルーブリック表現であるICEモデルの実践を蓄積し、各授業の改善と連動したボトムアップ型教学マネジメントを、他機関でも利用可能な形で開発する。
●教学サーバ上に以上を支援する仕組みを実装し、取組の整合性を確保しつつ持続的に実施可能とする一つの事例を提示する。

【本取組の質を保証する仕組み】

 内部質保証を確実なものとするために、アセスメント・ポリシーを策定し、ミクロレベルでどのように学生の学修成果を評価するか、また機関としてそうした評価が着実に稼働しているかを検証する体制を確定した。
 また、こうした活動が地域にとって意味のある形で機能しているかについて検証するために外部評価委員会を強化し、地域の有識者に報告、実際に授業の現場に立ち会ってもらう等により、地域に開かれた教学運営へと転換している。また福祉の実習先とも連携を強化することで、以上の取組が確かに地域に根差したものとなるようにしている。
具体的な実施計画における指標 2016年度
(起点)
2017年度
(実績)
2019年度
(目標)
学生の成績評価(GPA平均) 2.15