東北公益文科大学 アクティブ・ラーニングの推進と学修成果の可視化を通した卒業時の質保証の取組
テーマⅤ「卒業時における質保証の取組の強化」
事業期間:2016年度~2019年度
【取組の概要】
本事業では学生の取組の量的な充実を通して、主体的に生きる質的に優れた学生を育成することを目標とし、新規に5つの事業に取り組むことで卒業時における学生の質保証に向けた取組を総合的に加速する。(1)身近なモデルを提供するミラーリング法を取り入れたアドバイザー面談の実施により、学生自身の振り返りや目標設定を充実させる、(2)ラーニングコモンズを設置し学修機会を提供して学修量を増加させる、(3)ルーブリックやアセスメントテストを既存のアセスメントツールと有機的に関連づけ学修成果を客観的に評価・可視化する、(4)学修成果を社会に発信するポートフォリオを新規に開発し在学中に活用することで学生の質的充実を図る、(5)ステークホルダーと緊密に連携し人材育成の評価方法の開発や評価の実施を共同で行う。
【取組のポイント】
➢授業外学修を促進するラーニングコモンズの新設
➢ディプロマ・ポリシーに定める能力の獲得状況を評価するルーブリックの開発
➢卒業時の「ディプロマ・サプリメント」の発行と各年度末の「プレディプロマ・サプリメント」の発行
➢ステークホルダーとの連携による学生のキャリア形成と教育改善
【キーワード】
「ラーニングコモンズ新設」、「DPルーブリック」、「自作ポートフォリオ開発」
【人材育成目標】
東北公益文科大学では、「尊重し調和へ」という基本理念のもと、人材育成「知を咲かす」、社会貢献「知をひらく」、公益学の確立「知を結ぶ」の使命を実現すべく活動を行っている。特に人材育成においては、豊かな教養と専門性を身につけ、地域や国際社会の課題に挑戦する公益人の育成を目指している。
また、ディプロマ・ポリシーを次のとおり定めている。
幅広い知識と専門知識とともに、地域の人々と連携して、地域を牽引していく実践力を磨くため、カリキュラムを通し、以下の4つの力を身に付ける。
►1 コミュニケーション力と発信力 ►2 国際感覚
►3 創造力と企画力 ►4 リーダーシップ
【教育上の課題】
ディプロマ・ポリシーに定めるスキルの獲得状況は、授業評価アンケート、卒業論文提出時調査、ポートフォリオの学修ワークシートにて確認しているが、学生本人による主観評価にとどまっている。また、学修ワークシートではレーダーチャートを用いて各能力の獲得状況を可視化しているが、紙媒体を用いているためカリキュラム・ポリシーやディプロマ・ポリシーの点検評価に用いることが難しい状況にあった。そこで、ポートフォリオを新規に開発し、学修ワークシートをWeb上に統合、GPAの推移やスキルに関するルーブリック評価の結果を自動集計・管理できるようにする。
【これまでの取組、実績・成果】
授業外学修時間の増加
ラーニングコモンズは2017年度冒頭から運用を開始している。内部進学の大学院生をTAとして配置し、室内の環境整備、パソコンやプロジェクタ等の物品貸出、キャリア科目の提出物添削のほか、レポート作成や必修科目の支援、個別の相談、指導を開始している。試験期間中の利用者数は1日100名を超えることもあり、学生の授業外学修の場として一定の役割を果たしているといえる。なお、学生の授業外学修時間は2015年度から2017年度までに10→12.9→13.5時間と着実に増加している。
アクティブラーニング推進への取組
テーマVの取組を中核にテーマI~IVの取組を進めるなかで、アクティブラーニングに相応しい授業時間について検討をしていたが、2018年度からは学部の授業時間を1コマ105分としている。授業時間変更にあたっては、学年暦や時間割の組み換えのほか、教職課程と社会福祉士養成課程の指定科目の授業時間変更など、諸課題を洗い出し全学一体となって準備を進めた。
105分授業になったことから、1セメスターが試験を含め14週となり、授業改革に加えて新入生のオリエンテーションガイダンスなどの初年次教育の期間を長く取れるほか、夏季休業期間を活用したフィールドワークや実習、留学期間の確保につながることになった。
ディプロマ・ポリシーに定める能力の獲得状況を客観的に評価するためのルーブリック開発
ルーブリック作成に向け、DPに定める4つの力の因子構造を求めるために2016年度に学生向けに調査を実施した。その後、評価の観点を定めるためにFDにおいて教員間で議論を行い、教育推進センターでルーブリックを試作した。この試案を基に2017年度の授業評価アンケートにおいて学生が自己評価をおこなった。
この結果と外部テストであるアセスメントテストの結果を比較し、各項目の評価基準の調整を図り、2017年度末にルーブリックの試案が完成した。2018年度以降も、学生による自己評価を実施し、引き続きアセスメントテストとの比較を行い、基準関連妥当性について検証をしている。
また、産業界や卒業生に対しても意見聴取を行っており、継続して内容の妥当性や構成概念の妥当性についても確認し、改善を図っていく予定となっている。
なお、学内ガイダンス参加企業やインターンシップ受け入れ先等を対象に「入社段階で身につけていてほしいスキル」についてアンケート調査を実施しており、今後は業種別に平均値を算出して学生に提示することで、学生が自己成長の目標設定に活用できるようにする計画となっている。
【今後の取組の計画】
<取組の計画>
現在「ディプロマ・サプリメント」の発行に向けて、FDや教授会で議論を行っている。その中で、学生の学びや成長を実質化するため、「ディプロマ・サプリメント」を卒業時に発行するだけではなく、在学中も年度ごとに「プレディプロマ・サプリメント」を発行し、学生自身が客観的に学修成果を振り返り、次年度に向けてより具体的に学修目標を設定できるようにする方向で検討を進めている。これにより、現在実施しているアドバイザー面談や授業評価アンケートなどに加えて、教育課程の点検評価の取組を加速することができると考えている。
今後は、これまで以上にIRによる分析を教育内容や方法、カリキュラムの改善などに活用していきたいと考えており、学内の各部署で保有するデータをより様々な形でリンクさせて分析するための体制の強化を図っているところである。
【本取組における成果と社会へのインパクト】
AP事業テーマ(I~V)全てを様々な改革で有機的に結合させ、卒業時の質保証と成長実感を持った学生の社会への輩出を促進する。
DPに定める能力を評価するルーブリックをステークホルダーと協働で開発することで、社会へのシームレスな接続が期待できる。
【本取組の質を保証する仕組み】
教育の質保証としては、アドミッション、カリキュラム、ティーチング、ラーニングアウトカムのそれぞれに対するアセスメントポリシーにより、毎年度、公益学部として評価を行い、その結果を教授会で共有している。カリキュラムやティーチング、ラーニングアウトカムの評価にあたっては、カリキュラム改善の成果や学生のスキル育成状況などをできる限り数値化して、過去のデータとの比較などにより客観的に分析を行っている。アドミッションについては、入試区分別のGPAやスキル獲得状況、試験科目の信頼性と妥当性の観点から評価を行っている。評価の結果、課題が見られた場合は、3か年の中期計画に基づいて設定する年度ごとの実施計画に具体的な施策事業を盛り込み、PDCAサイクルを回しながら改善を進めている。
また、本取組の進捗状況は、評価シートで管理しており、教育推進センターが内部評価を行っている。この評価シートは目標達成に必要な活動を整理した戦略マップに基づいており、戦略目標ごとの重要成功要因(CSF)を定め、さらに各CSFに対して重要評価指標(KPI)を設定している。内部評価の結果は外部評価委員会で報告し、委員からコメントをいただき意見交換をしている。さらにその内容を含め、取組の進捗状況をまとめた年度報告書を発行し学内外に公開している。
具体的な実施計画における指標 |
2016年度
(起点)
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2017年度
(実績)
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2019年度
(目標)
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学生の成績評価[GPA平均] |
2.40 |
2.37 |
2.55 |
学生の授業外学修時間(1週間あたり) |
12.0時間 |
13.5時間 |
20.0時間 |
進路決定の割合([就職決定者数+進学者数]/卒業者数) |
95.9% |
96.5% |
98.4% |
卒業生追跡調査の実施率 |
10.0% |
26.1% |
25.3% |
インターンシップ参加者数 |
105人 |
131人 |
120人 |
長期学外学修プログラム参加者数 |
10人 |
20人 |
25人 |
ステークホルダーが参加する授業の延べ時履修者数 |
550人 |
1316人 |
1000人 |
ポートフォリオ活用授業数 |
30科目 |
32科目 |
100科目 |
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