高知大学 質保証の基盤構築に向けた「地域協働による教育」の多面的評価指標の実践的検証
テーマⅤ「卒業時における質保証の取組の強化」
事業期間:2016年度~2019年度
【取組の概要】
本取組は、地域協働による教育の展開と、それによる学生の能力の育成を中心に、①教育改革に向けた教職員の意識改革、②ディプロマ・ポリシーに基づいた多面的評価指標の開発、③地域と社会と協働した学生の成長の検証、の3本の柱で、教育の質保証のための仕組みの構築を目指すものである。ディプロマ・ポリシーに沿って10+1の能力(10の具体的能力+統合・働きかけの力)の定義付け及び明確化を行い、学生を多面的に評価し、学修ポートフォリオを用いて学修活動を可視化することで、出口を見据えた学生の能力育成を行う。また、これらの結果を用いた学生面談体制の整備や、教職員の意識改革のための授業公開週間(FD・SDウィーク)を実施するとともに、こうした活動全体を可視化することで、卒業時までの教育の質保証を行う仕組みを構築する。
【取組のポイント】
➢ルーブリックを用いた多面的評価指標の開発・実施・検証
➢学修ポートフォリオによる学修成果の可視化
➢学生面談及びリフレクション・セメスターの実施
➢ディプロマ・サプリメントの発行
➢FD・SDウィーク(授業公開週間)による教職員間の教育活動の共有化
【キーワード】
「地域協働による教育」、「多面的評価」、「意識改革」
【人材育成目標】
総合的教養教育の実現により、各学部・学科等のディプロマ・ポリシーに従いそれぞれの専門性を身に付けるとともに、分野を横断した幅広い知識・考え方等が学生自身の内部で統合され、世の中に働きかける汎用的な能力にできる人材の育成を目標とする。
また高知県にある唯一の国立大学であることを意識し、とりわけ、地域、海洋、防災、医療に関する学際的な教育を本学の特色と位置づけ、グローバルに通用する知識・考え方を教授するとともに地域での実践活動を通じ地域の発展に貢献できる人材育成を目指した「地域協働」による教育を実施する。
【教育上の課題】
中期目標・中期計画第2期に掲げた総合的教養教育を推進するために教育力向上3か年計画を2期にわたって継続し、1年次の課題探求実践セミナー(PBL型授業)を全学必修とする等総合的教養教育を展開してきた。しかしながら取組は十分とは言えない状況であり、2016年度に実施した3年生を対象とする外部の客観テストにおいては、対人に関わるコンピテンシーが弱いことが明らかになった。また、第2期の当初においては「統合・働きかけ」をディプロマ・ポリシーとして掲げておらず、この理念が教員間で十分に共有されていなかった課題も見えてきた。そこで本事業において、コンピテンシー(10+1の能力)が卒業段階でどれだけ身に付いたのかを、多面的に評価する仕組みの構築を行い、教育の質保証を推進していく。
【これまでの取組、実績・成果】
<取組>
(1)「地域協働」を核とした能動的学修モデルの多面的評価指標の開発・実践を促進させるために、以下の取組を行った。
①学生の視点からわかりやすく学修成果を可視化できる仕組みを構築するために、学修ポートフォリオの運用を開始し、成績評価分布表示システム、多面的評価、ポートフォリオサマリーの可視化を行った。また、これに基づいた学生面談を実施し、形成的評価を行う体制を構築した。
②ディプロマ・ポリシーに沿って10+1の能力の評価指標を作成し、評価科目の選定を行った。
③学外者を含む多面的評価指標開発研究会を開催し、セルフアセスメント試行モデルの評価・改良を行い、2018年度入学生から実施した。
④外部の客観テストと学修行動調査を実施し、分析・報告を行った。
5卒業生及び卒業生就職先調査を実施し、複数年度の結果を用いて分析・検討を行った。
(2)教育改革「高知大学の教育力向上計画」を再生し加速させる“教員のファシリテーション力向上”のために、以下の取組を行った。
①学外の人材と大学が協働してアクティブラーニングや授業評価の開発を行い、そのための教室整備を行った。
②FD・SDウィーク、外部講師によるワークショップ及び高大接続の視点からの高等学校教員への公開授業と授業協議会を開催した。
③リフレクション・セメスターにおいて、形成的評価をアドバイザー教員と学生が共有していくために、学生面談に関わるFDを開催した。
<実績・成果>
・各評価の位置付け・役割を明確にし、入学から卒業後までの評価を体系化した
・多面的評価指標を開発することで、ディプロマ・ポリシー達成度等の検証データを取ることが可能となった
・学修ポートフォリオにより学修成果を可視化することができた
・FD・SDウィークにより教職員間の教育活動の共有化が図れた
【今後の取組の計画】
<取組の計画>
「①教育改革に向けた教職員の意識改革」では、全教職員参加型のFD・SD
ウィーク(授業公開週間)を引き続き実施し、Webシステム内に蓄積されたデータを基に、教育改革に向けた意識改革に有用となる分析検証を行っていく。また、教職員プラットフォーム上のFD・SDコンテンツを増やし、意識改革を促進する。「②ディプロマ・ポリシーに基づいた多面的評価指標の開発」では、開発した指標を他のデータと照らし合わせながら、その指標について検証と検討を重ねていく。また、ディプロマ・サプリメントの開発を行い、学修成果の可視化と質保証を進めていく
。「③地域と社会と協働した学生の成長の検証」では、調査で得られた定性的なデータから定量的な調査を実施し、在学時のデータ等と紐づけ、分析検証を深めていく。
【本取組における成果と社会へのインパクト】
●本学が開発した学修ポートフォリオ及び学生が身に付けるべき能力を示したルーブリック評価指標は、学修成果を可視化するためのツールとして広く流用可能であり、シンポジウム、ポスター発表等で評価を得ている。
●目標設定と振り返りのための個別面談の実施は、学生支援の強化モデルとして、シンポジウム等を用いて他機関へ発信している。
【本取組の質を保証する仕組み】
取組全体及びその成果と課題を可視化できる体制を構築するため、中心拠点として、理事(教育・国際担当)兼副学長を本部長、各学部長を委員とする「大学教育再生加速プログラム事業実施本部」を設置している。また、その直下に学生・教育支援機構の各センターから選出された委員等で構成する「大学教育再生加速プログラム事業推進委員会」を設置している。そして各学部には、本取組を推進するための委員会「教育ファシリテーション委員会」を設置し、全学一体となって本事業の各種取組の企画・推進、連絡・調整を行うことができる体制を整備している。
本取組の評価体制として、学内評価体制と外部評価体制の2つを構築している。学内評価体制は、大学教育創造センターの教育評価ユニットが担っており、本事業の取組で得られた情報とその周辺にある学務情報を連携させ、本取組の検証を定期的・恒常的に行っていくこととしている。外部評価体制は、入口(高大接続)から出口(大社接続)までを評価すること、また、本取組の実施状況や成果に関して適切性や達成状況を客観的・総体的に検証することを意識し、委員を企業等関係者、本学の卒業生及び高等教育機関の有識者等で構成している。
具体的な実施計画における指標 |
2016年度
(起点)
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2017年度
(実績)
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2019年度
(目標)
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学生の成績評価(GPA平均) |
2.20 |
2.24 |
2.20 |
学生の授業外学修時間(1週間当たり) |
6.0時間 |
14.0時間 |
12.0時間 |
進路決定の割合((就職決定者数+進学者数)/卒業者数) |
90.0% |
91.0% |
93.0% |
事業計画に参画する教員の割合(参画教員数/在籍教員数) |
73.0% |
75.3% |
80.0% |
質保証に関するFD・SDの参加率(参加教職員数/在籍教職員数) |
58.0% |
76.1% |
70.0% |
卒業生追跡調査の実施率(調査回答者数/卒業者数) |
12.0% |
13.8% |
20.0% |
授業満足度アンケートを実施している学生の割合 |
60.0% |
70.6% |
65.0% |
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