大学教育再生プログラム(AP) テーマⅠⅡ複合型

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工学院大学   グローバル社会で活躍できる真の国際人育成の第一歩―ハイブリッド留学の挑戦

テーマⅣ「長期学外学修プログラム(ギャップイヤー)」

事業期間:2015年度~2019年度

【取組の概要】

 日本の理工系大学においては、グローバルに活躍できる真の国際人育成が大きな課題である。この目標に到達するための第一歩として、本学は長期学外学修プログラム「ハイブリッド留学」を独自に開発した。その最大の特徴は、「語学の習得から」というこれまでの留学スタイルを脱却し、「まず海を渡る」ことを最優先させ、海外で暮らしながら国際感覚や英語力を養成することを最大の目的としている点である。本取組は、この「ハイブリッド留学」を抜本的に改革し、留学参加を希望する学生が自らの学力および社会人基礎力を踏まえて最も適切な時期に海外に行き、主体的な共同学修経験を積むことで、より大きな飛躍へとつなげられるよう全力で支援する方向へと大きく舵を切るものである。また、プレリクイジット制※、クォーター制の全学実施などと連動することで、「ハイブリッド留学」の拡充が可能となり、全学的な教育改革を加速させるものとする。

【取組のポイント】

➢海外学修プログラムの改革と参加学生数の増加
➢社会人基礎力と異文化理解力を育成する主体的共同学修経験
➢全学的なカリキュラムとの連携強化と教学改革の推進
【キーワード】
「ハイブリッド留学」、「社会人基礎力」、「異文化理解」、「教学マネジメント」

【人材育成目標】

 工学院大学では建学の精神である「社会・産業と最先端の学問を幅広くつなぐ『工』の精神」のもと、「無限の可能性が開花する学園」を全学の理念として掲げ、多様化・複雑化・グローバル化する社会においても常に変化に対応しうる人材育成を目指している。建学以来一貫して、技術を活かして社会に貢献する人材の育成を目的としてきた本学では、さまざまな分野においてリーダーシップを発揮できる人間を育てたいと考えている。

【教育上の課題】

 グローバル社会では異文化を理解して知識や技術を応用する「思考力」、自分の考えを伝えるための「表現力」が不可欠となる。しかし、外に目を向け主体的に行動する学生は必ずしも多くない。それゆえ、これまでよりも留学に対するハードルを下げ、まず語学の習得からという従来の留学スタイルから脱却し、「まず海を渡る」ことを最優先させるという逆転の発想から、海外で暮らしながら国際感覚や英語力を養成することを最大の目的とする「ハイブリッド留学」を開始した。その内容を深化させ、真のグローバル人材育成に繋げることが課題である。

【これまでの取組、実績・成果】

<取組> 
 前述の発想からスタートした「ハイブリッド留学」では、留年防止のための必要最低限の科目は本学担当教員が渡航し現地で実施することにより、専門科目等の現地開講科目履修の際の「言葉の壁」を取り払った。2015年度の「大学教育再生加速プログラム(AP)」に採択されて以後、本プログラムの深化と発展に努め、全学部全学年を対象とした春期ハイブリッド留学を開始した。さらに、2017年度はアメリカ・シアトル、イギリス・カンタベリーの他に、新たな留学先展開地としてニュージーランド・オークランドでの調査・交渉を進め、新規留学先と協定を締結するに至った。結果として、参加者増加に繋げている。
 また、2015年度新設の先進工学部に始まり、他学部も順次クォーター制導入に踏み切り、全学的な教学改革の流れを加速させるとともに、本プログラムに参加しやすい教育体制整備を行っている。
 2019年度には、「高度な工学知識を兼ね備えた “エンジニア・パイロット”」の養成を目的に新設される先進工学部機械理工学科航空理工学専攻においても、「ハイブリッド留学」の制度と着想を活かした教育を実施する。ハイブリッド留学期間を活用し、学生が国内外の空で操縦訓練を行い、操縦ライセンスを取得できるプログラムを構築した。
 ハイブリッド留学参加学生は渡航経験を糧に、帰国後の学修活動にも積極的な姿勢で取り組み、その成果は当初の予想を超えるものであった。学修活動以外にも、本学のプログラムで海外に行った学生が、本学キャンパスに受け入れた留学生のサポートを行うキャンパス・アテンディング・プログラム(CAP)に積極的に参加し学生のリードを行っている。また、留学経験を他の学生たちに伝えるイベントを行うなど、留学に参加していない学生への波及効果をもたらしている。また、学生の成績評価(GPA平均)については、クォーター制の導入とプレリクイジット制※による段階的な学修プログラムの実施によって、GPAをあげるために何度もトライする学生も出てくるなど、「ハイブリッド留学」から帰国した学生からの刺激とも相まって、学習に対する前向きな姿勢が顕著になってきた。さらに、外国語教育や語学研修の改革にも取り組み、海外留学にチャレンジする学生も増加している。
<実績・成果>
・新規留学先開拓、全学部での実施による「ハイブリッド留学」の深化と発展(2017年度は参加者105名)
・「ハイブリッド留学」を通して開発した手法を、他の海外学修プログラムおよび新専攻の教育プログラムへ活用
・ハイブリッド留学参加者の能力伸長の把握
・クォーター制・プレリクイジット制※の導入による留学しやすい体制整備、学生の学習意欲の向上
・「ハイブリッド留学」に参加していない学生への波及効果

【今後の取組の計画】

 今後も「ハイブリッド留学」を全学部で展開する。現地ではフィールドワーク等の共同学修課題を実施し、日本での事前事後学習も充実させるなど、留学参加者のより大きな飛躍へとつなげられるプログラムとなるよう全力で取り組む。また、全学部全学年の学生対象の春期特別ハイブリッド留学においては、外国人向けの英語授業を受講するほか、専門や年齢の異なるメンバーでグループワークを行い、積極的に課題を発見する主体性、チームワークを生かして課題に取り組む協調性を養うプログラムを目指して取り組む。
 入学時に新入生に実施している社会人基礎力テスト「PROG」を留学後にも行い、参加学生に自分の強みや弱み、留学によって伸長した能力を認識する機会を提供し、大学側としても留学によってどのような行動特性(コンピテンシー)が特に向上するのか分析を行ってきたが、今後はさらに「TOEIC」や「SPI」など他の指標との相関をはかりながら、社会人基礎力を有した真のグローバル人材の育成へと繋げていく予定である。

【本取組における成果と社会へのインパクト】

●新たな留学スタイルを提案した斬新な「ハイブリッド留学」に対して在学生、高校生、保護者からの関心が高まっている。
●学修ポートフォリオの作成を通じて社会人基礎力と異文化理解力を向上した学生に対して企業の関心が高まっている。
●クォーター制やプレリクイジット制に基づく段階的な学修プログラムの開発に取り組み、長期学外学修プログラムを組み込んだカリキュラムモデルとして他大学への波及効果も期待できる。

【本取組の質を保証する仕組み】

 「ハイブリッド留学」の内容の改善と向上を審議することを目的として、教育開発センター・各学部および機構から成るハイブリッド留学運営委員会を組織した。各学部のプログラムを相互に検証して改善に繋げることができるようになった。
 さらに、参加者のGPA、アンケート結果、PROGなどのデータをIR室に集約し、教育開発センターや有識者、企業従事者等を外部評価委員とした評価委員会で「ハイブリッド留学」についての評価と検証を行っている。得られた結果を次年度の取組実施に向けての改善点を反映していくというPDCAサイクルを構築することで、本取組の質を保証している。
※プレリクイジット制(prerequisite):特定の科目を受講する前提として、あらかじめ履修しておかなければならない科目を定める制度。
具体的な実施計画における指標 2015年度
(起点)
2017年度
(実績)
2019年度
(目標)
長期学外学修プログラムに参加する学生の割合 1.5% 4.91% 10%
学生の授業外学修時間 約21時間 30時間
学生が企画する活動数 2件 5件 10件