大学教育再生プログラム(AP) テーマⅠⅡ複合型

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関西大学   21世紀を生き抜く考動人<Lifelong Active Learner>の育成

テーマⅠ・Ⅱ複合型

事業期間:2014年度~2019年度

【取組の概要】

 本学の取組は、21世紀を生き抜く考動人養成を図るものである。社会から要請される能力の育成には、高次教養教育の展開や、教養教育と専門教育の連環が必要である。汎用的技能や批判的思考力等の育成に必要な意思決定学習や環境適応学習の機会を保障すべく、交渉学・クリティカルシンキングを主題とした科目・ゼミ・ワークショップ(WS)を開設する。これが、専門教育(ゼミ等)と初年次教育とを有機的に接続する拠点となる。特にWSは卒業生が考動力を確認・再生する機会となる。
 もう一方で、この考動力を形成的に評価するコモンルーブリックを開発し、教育学修活動の成果を可視化するとともに、学修行動・到達度を間接・直接評価の両面から調査する。この結果を継続的に教育改善に反映するために、学修コンシェルジュ育成・教員コミュニティ形成を視野に入れた全学的なFD・SDを更に充実させる。

【取組のポイント】

➢生涯に亘って創造的な思考と責任ある行動を実践し続ける考動人の養成
➢考動力の成長・確認・再生を可能にするためのプラットフォームの構築
➢PAL(Peer Assisted Learning)を支える学生アシスタントの大学間連携コミュニティの構築
➢学生の学び、学生スタッフの育ちを把握するためのルーブリック作成
➢考動力を評価するための指標開発
➢学修行動・到達度調査等により学修成果を検証し、 教育改善・学修支援に反映
【キーワード】
「LA(Learning Assistant)」、「PAL(Peer Assisted Learning)」、「交渉学」、「クリティカル・コミュニケーション」、「サーバント・リーダーシップ」、「共通教養ゼミ」、「高次教養教育」、「教養教育と専門教育の連環、内部質保証」、「アセスメントポリシー」、「高大接続」、「教学IR」

【人材育成目標】

 学理と実際との調和を求める「学の実化」を学是とする本学においては、①開かれた大学構想の具体化、②国際化の推進、③情報社会への対応を基本戦略としており、これを実現するために「グローバル化する社会・情報化社会に対応することができる有為な人材の養成」を目指している。本取組においては、有為な人材の背骨となる考動力を養うことを柱とし、クリティカル・コミュニケーションとサーバント・リーダーシップ(従来の上意下達式の支配型リーダーシップに代わり、まず組織のメンバーに奉仕することを優先する支援型リーダーシップ)を実践・発揮できる人材、生涯に亘って創造的な思考と責任ある行動を実践し続ける「考動人(Lifelong Active Learner)」の養成を目標としている。

【教育上の課題】

 社会人に必要とされるクリティカルコミュニケーションの力やサーバント・リーダーシップを養うためには「特定の課題に取り組むチームワーク体験」や「実社会とのつながりを体感できる教育」が不可欠である。前者は初年次学生を主たる対象とした特定の科目に限られており、全学的に普及することが課題であった。後者についてはクリティカルシンキングや交渉学の要素を取り込んだ学部専門科目や、これをゼミに取り込む予定のある教員の存在を把握できたため、学部を問わず2年次以上の学生が履修できる共通教養ゼミを開講することにより、初年次教育と学部専門科目を有機的に架橋する拠点作りを行っている。このことにより前者の全学的展開にも道が開かれたが、担当教員の増員が新たな課題である。新執行部により従来のスタディスキルゼミがプロジェクト型学習科目(群)に改編されたが、初年次学生の名称と内容に関する認知度が低く、改編前に比して受講生が減少している。また、これまでの教育指導の蓄積をプロジェクト化することに苦悩している教員もおり、プロジェクト型学習科目を実効あるものにすることが課題である。2018年より専任スタッフをおいて当該科目担当者間で経験や知見を交換共有する取組を始めている。授業評価アンケートにより教員のパフォーマンスは把握できるようになったが、学生の「学び」について十分な把握はなされていない。これを掌握するべく、アンケートを翌年度中に改編することを計画している。

【これまでの取組、実績・成果】

 アクティブ・ラーニングの実践を目指す科目、その担当教員、ならびに受講生のいずれもが順調に増加し、考動力養成プログラムの基盤が充実している。またアクティブ・ラーニングを支援する学生スタッフの裾野も広がり、LA・TA・SAを含む約1,300名の学生(29団体)がPAL(Peer Assisted Learning)の中核を担う存在となっている。とりわけ、LAは授業時間外においても自主企画を複数立ち上げ、また他大学の学生スタッフとの連携にも取り組んでいる。複数の大学から講演あるいは研修の支援、出張業務などを依頼されている。2018年にはPALの大学間連携を呼びかけるフォーラムを開催したが、その後の継続的開催が決まるなど、PALの裾野が着実に拡大している。このほか、社会人、他大学の学生・教職員、あるいは高校生を交えた交渉学ワークショップを年に複数回開催するなか、このワークショップを企画・運営する学生のプロジェクトマネジメント力が確実に育成されている。企業との共同企画である交渉学ワークショップは安定的・継続的に開催されており、またワークショップに参加した高校生が自ら中心となって中学生を対象としたワークショップを企画、開催するまでに成長している。他方、本取組が目指すミドルレベルのアセスメントデザインは学内APプロジェクトにより広がり、現在、13学部中11学部と協働体制を組んでいる。また、入学時の学生調査に関しては、ほぼ100%の記名回収率を達成できており、大規模大学で行うことの意義が確認されている。その結果を各学部教授会、大学執行部や法人部局に報告するとともに、SDや新任教員・職員研修などにも利用している。また抜粋版ポスターで学生にも周知するなど、全構成員の共通認識を促進している。

【今後の取組の計画】

 能動的学修を支援する学生スタッフの交流が大学の壁を超えて広がり、相互に学生・教職員が往来して、情報の共有や創造が始まっている。このつながりをさらに拡大していくため、今後はPALフォーラムを定期的に開催する。また、交渉学ワークショップについては、複数の企業等とのコラボ開催をこれまで通りに継続開催するとともに、ワークショップに参加する高等学校を増やして高校とのコラボ企画の裾野を広げ、この企画に参加した高校生が中心となって開催する、中学生を対象としたワークショップの支援もおこなう。教学IRについては、これまでミドルレベルの内部質保証に注力していたが、マクロレベルとして大学全体のアセスメントも強化するため、学長下の教育組織として改変する方向で検討されている。また今後、各学士課程教育においてアセスメントポリシーを作成することで、本取組が教学IRの組織化を実現し、内部質保証システムに組み込まれることになっている。

【本取組における成果と社会へのインパクト】

 アクティブ・ラーニングを実現すべく学生の学びを支援する学生アシスタントの制度を導入する大学が増えている。導入に当たって、本学のLAが出張して当該大学の教員・学生を対象に活動例を示したり、本学の研修企画に他大学の教職員・学生アシスタントが参加したりするなど、学生アシスタントによる学生の学びの支援(PAL:Peer Assisted Learning)が普及し始めている。APにおいて本格的な取組を始めた「交渉学」は、この学びを支援するLAが中心となって、年に複数回ワークショップを開催している。この中には社会人と協同して開催するもの、高校生を対象とするものがあるが、前者には他大学の学生・教職員も参加し、後者に参加した高校生が中学生を対象とする同趣の企画を立案、実施するなど、「交渉学」の裾野は確実に広がっている。このほか、アクティブ・ラーニングを推進するために高大接続・高大連携の新しい「かたち」を模索している高等学校と共同して、高校生と大学生が、ならびに高等学校教諭と大学教員とが、知見や情報などを交換・共有するためのワークショップを開催している。2018年には「高大接続のあたらしいかたちを求めて」と題してフォーラムを開催し、大学・高等学校の双方より新しい実践などが報告されたが、継続的開催を望む声が多数寄せられており、今後更なる普及が期待できる。

【本取組の質を保証する仕組み】

 生涯に亘って創造的な思考と責任ある行動を実践し続ける「考動人(Lifelong Active Learner)の養成がつつがなくおこなわれるように、本取組においては考動力を構成する複数のコンピテンシーの同定・評価に関して、まず「考動力」を「基礎能力」「高次能力」に分け、社会人基礎力・学士力・DeSeCo・21世紀型スキルを参考にしたうえで、それぞれ4段階のルーブリックを作成して、これらの能力の測定・検証をおこなっている。また、学内の各部局で個別におこなわれてきた学生調査を一元化し、学修行動・到達度を調査する間接評価と教員の直接評価を実施するとともに、各年度末に実施するパネル調査によって「学び」のプロセスを追跡・検証している。さらに、SD研修を受けた事務職員が学修コンシェルジュとして学生の個別支援をおこなっている。以上の取組について、内部評価委員会が進捗状況等を点検・評価した結果を外部評価委員会に報告し、両委員会とも必要に応じてAPプロジェクト委員会に、改善を要求・勧告する体制が整備され、実質的に機能している。
具体的な実施計画における指標 2014年度
(起点)
2017年度
(実績)
2019年度
(目標)
AL(アクティブ・ラーニング)を導入した授業科目数の割合 27.9% 41.6% 50%
AL科目のうち、必須科目数の割合 61.9% 68.7% 75%
ALを受講する学生の割合 85.6% 97.1% 87.9%
学生1人当たりAL科目受講数 2.93 科目 5.55 科目 3.09 科目
ALを行う専任教員数の割合 87.1% 92.8% 87.1%