阿南工業高等専門学校 到達目標を明確にした社会人力・人間力を培う自己実現学修の構築
テーマⅡ「学修成果の可視化」
事業期間:2014年度~2019年度
【取組の概要】
阿南高専は地域・産業界の要望に応え、2014年度より4学科から1学科5コース制に改組した。本取組では、学修到達目標の達成をめざして、ラーニング・ポートフォリオを活用した学修時間の確保と学修過程を成績評価に組み込むことで学生の自発的な学修動機づけにつなげる。また、社会から要望の強い社会人力・人間力の評価指標を独自に開発し、その獲得能力を可視化して学生が成長を客観的に把握しながら自身のキャリア形成につなげる。学生が知的かつ人間として総合的に成長できる仕組みを構築するものである。本取組は、これらを実現するためこれまで実践してきた学内教員のFD活動と学生調査IRをベースとして、新たな評価指標を導入して学修成果を可視化し、教員と学生がともに能力を開発しながら教育改善を実現するものである。
【取組のポイント】
➢全学で使用する学習管理システム(LMS)をICT活用教育の基盤とし、学生の学修利便性の向上と教員の教育効率化を推進する。
➢学生が獲得する社会人力・人間力について、正課科目および正課外活動の学生生活全般からルーブリック評価し可視化することで自身の成長を客観的に把握しキャリア形成につなげる。
➢ラーニング・ポートフォリオを活用して目標に向かって主体的に努力する学修動機づけを図る。
➢教員は、学生の学びの実態を把握し、データ分析結果を教育改善に活用する。また、自身のアカデミック・ポートフォリオやティーチング・ポートフォリオを作成し、振り返りによって教育改善に取り組む。
【キーワード】
「LMS」、「コンピテンシー」、「ラーニング・ポートフォリオ」、「アカデミック・ポートフォリオ」、「IR」
【人材育成目標】
変化の激しい社会を生き抜く力を身につけた人材を育成する。そのためには、自らの専門分野の技術・知識に加え、他の専門分野への興味と技術獲得意欲を有し、継続した学習意欲が必要である。また、社会で要求される社会人力・人間力を可視化し、学生自身が成長を客観的に把握し、自身のキャリア形成につなげることを目標としている。
【教育上の課題】
これまでの取組から教員のFD活動への高い意識が醸成されているものの、学生生活実態調査から学生の授業外学修時間が十分ではないことが明らかになっていた。このことから、学生の主体的な学びの醸成は不十分な状況だった。そこで、本取組では、学生の学びに重心を置いた教学マネジメントの改善を図り、学修成果を可視化し、学生が自ら徹底して学ぶことができる環境を整備する。
【これまでの取組、実績・成果】
<取組>
●LMSをICT活用教育の基盤として活用し、学生の学修利便性と教員の教育効率を向上させる。
●国立高等専門学校機構モデルコアカリキュラムの技術者が備えるべき分野横断的能力、いわゆるコンピテンシーを可視化する。
●ラーニング・ポートフォリオを活用して学びの動機づけを促し、授業外学修時間を確保し、主体的な学びの習慣を確立する。
●教員の振り返りを促す実のあるFD活動として、アカデミック・ポートフォリオとティーチング・ポートフォリオ作成ワークショップを継続して開催する。
●学修成果を把握する取組としてIRを活用し、客観的なデータとして学修成果を可視化し、データに基づく組織的な教育改善を実現する。
<実績・成果>
●LMSは、2017年度では学生93%、教員76%が利用しており、本校のLMSは安定して利用されている。また、開講科目のうち47%の科目でLMSが活用されている。
●本校のステークホルダーである企業のアンケートをもとに、社会で求められ、優先して可視化すべきコンピテンシーを特定した。
●特定したコンピテンシーを評価するルーブリックを独自に開発し、教員による評価および学生の自己評価の試行を繰り返している。
●学生が自己評価したコンピテンシーの結果をグラフ化し、LMSを介して学生へフィードバックできた。
●本校の正課科目において育成できるコンピテンシーを教員への調査によって特定した。また、同様にして、正課外活動において育成できるコンピテンシーも特定した。
●全学における学生の年度目標設定とその中間振り返り、年度末における達成度評価の実施とこれらを含むラーニング・ポートフォリオを活用する学生支援ミーティングを実施した。
●アカデミック・ポートフォリオの簡易版を作成するワークショップを開催し、ほぼ全員がアカデミック・ポートフォリオを体験できた。
●学修成果を把握する各種アンケート調査について、LMSを活用することにより集計が省力化され、フィードバックが迅速にできるようになった。
【今後の取組の計画】
取組全体は順調に推進されており、大きな目標である学生の授業外学修時間は順調に増加していることから、今後は、各取組成果を検証してその質を向上させる必要がある。具体的には、開発したコンピテンシー評価用ルーブリックの改善・更新、主体的学びを促すために学生のラーニング・ポートフォリオ活用を推進し、学生支援ミーティングにおける一層のラーニング・ポートフォリオ活用が必要となる。また、コンピテンシーの可視化に留まらず、積極的にスキルを育成できるように授業におけるアクティブ・ラーニングの導入を推進する。また、事業支援終了後における継続のためにIR担当教員のスキルアップを図る予定である。
【本取組における成果と社会へのインパクト】
●全学でLMSを基盤としたICT活用教育を短期間に普及できた。
●独自の評価ルーブリックを開発し、学生のコンピテンシーを独自に可視化して学生へフィードバックできた。
●教員の実のあるFDとして、アカデミック・ポートフォリオおよびティーチング・ポートフォリオ作成ワークショップは他機関の教員も受け入れて実施し、また他機関における開催支援も増え、普及が進んでいる。
【本取組の質を保証する仕組み】
毎年、学外の有識者を外部評価委員として取組成果の評価、取組進捗の確認および次年度の計画について、外部評価を受けている。指摘事項は改善し、次年度の取組へ反映させている。
AP採択高専の合同シンポジウムを開催し、異なるテーマの採択校が集まり情報交換することで、取組改善の示唆を得ることができている。また、テーマⅡにおいては「学修成果の可視化の在り方検討会議」へ参加し、同テーマの採択校間で議論して取組の質向上に活用できている。
AP事業に関連するシンポジウム等へ積極的に参加、成果発表することで、外部の情報収集・意見聴取でき、取組改善に活用している。
具体的な実施計画における指標 |
2014年度
(起点)
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2017年度
(実績)
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2019年度
(目標)
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退学率 |
1.8% |
1.6% |
2.0% |
プレースメントテストの実施 |
100% |
100% |
100% |
授業満足度アンケートを実施している学生の割合 |
96.7% |
92.4% |
95% |
授業満足度アンケートにおける授業満足率 |
76.1% |
85% |
90% |
学修行動調査の実施率 |
97.8% |
92.4% |
95% |
学修到達度調査の実施率 |
57.2% |
79.4% |
95% |
学生の授業外学修時間 |
4.8時間 |
11.2時間 |
12時間 |
学生の主な就職先への調査 |
未実施 |
実施 |
実施 |
LMS活用学修支援ミーティングの実施クラス割合 |
- |
78.2% |
100% |
学修到達度調査、到達レベルの達成者が80%の科目数割合 |
50.60% |
79.4% |
80% |
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