大学教育再生プログラム(AP) テーマⅠⅡ複合型

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明石工業高等専門学校 15歳からのイノベーティブ・エンジニアの育成 ~感情に着目したアクティブ・ラーニングによるAbilityとCompetencyの向上~

テーマⅠ「アクティブ・ラーニング」

事業期間:2014年度~2019年度

【取組の概要】

 これまでの高等教育で重視されてこなかった「学生の感情」に焦点を当て、Ability(一人で何かできる力)とCompetency(集団の中で自分の能力を発揮できる力)を養うため、アクティブ・ラーニング(以下AL)を実施する。Abilityを養うALでは、学生に興味や知る喜びといったポジティブな感情を起こさせる授業法を実践し、学生の主体的学修を促す。一方のCompetencyを養うALでは、ポジティブな感情だけでなく、不安や怒りなどネガティブな感情も生まれる環境において、他者と協働する能力を修得させる。活動の中で教員はコーチ役として学生のCompetencyを向上させる。また、ALを専門とする教員による授業調査・分析や学生ヒアリングから、新たな教授手法を確立する。本取組によって、従前の画一的な高専教育をインタラクティブな教育へと質的変換を図る。

【取組のポイント】

➢ ( 学生)入学直後の1年生前期に新規必修科目「アクティブラーニング入門」を開講。学修の基礎として、学び方を学ぶ。
➢ ( 学生)全4学科の2、3、4年生全員と教員全員で行う新規必修のPBL型科目「Co+work」を開講。「自立、協働、創造」を養う。
➢ ( 学生)ルーブリックの導入、ふりかえりシートの運用、PROGテストの実施で、学修の成果を可視化し、次の学修につなぐ。
➢ ( 教員)AbilityとCompetencyを養うためのアクティブ・ラーニングの手法を学ぶため全学のFDを企画、実施する。
➢ ( 教員)全教員が担当する「Co+work」により「コーチング力」「ファシリテーション力」を向上させ、自身の授業に適用する。
➢ ( 教員)ルーブリックの導入、毎回の授業を振り返る「ふりかえりシート」の運用で、学修の成果を可視化し、次の授業運営に役立てる。
【キーワード】
「アクティブ・ラーニング」、「AbilityとCompetency」、「感情フィードバック」、「自立・協働・創造」、「ふりかえりシート」

【人材育成目標】

 本取組の目的は、「学生の主体性を育み、能動的に動ける人材を育てるための教育手法の開発と実践」としている。特に、これまで高等教育機関では重要視されてこなかった「学生の感情」に焦点をあてる。行動-思考-感情はそれぞれが相互に作用しており、15歳からの教育を行うことができる高専においては、感情への働きかけが大きな効果を生む、という仮説に立っている。
 これからの社会には、新たな知識を自分で学び、分野や立場の違った人と協働し、新しい価値を創造できる人材が求められている。しかしながら、現在の高専教育は、知識の詰め込みが大半を占め、他者との関係性の希薄さ、学生の実体験の欠如など社会に向きあえていない。特に、教えられることに慣れた学生は、自ら学ぶことをせず、与えられた知識を活かす場面にも巡り合えていない。自ら学び、他者との協働が必要不可欠な現代において、本取組の必要性は明らかである。

【教育上の課題】

 3年間の高校教育と4年間の大学教育の知識量を5年間で教える高専の教育方法は、これまでの知識量を重視した教育としては一定の成果を上げてきたが、社会変化と共に卒業後に求められる能力も変化してきた。ICTの発達により知識の取得が容易となり、また複雑な社会問題を解決していくには新たな知識を自分で学び、分野や立場の違った人と協働し、新しい価値を創造する能力が求められる。その中で、高専教育にも教育改革が必要となっている。学生の知識の量を増やすことを目的とした教育から、問題発見力、必要な知識を自分で調べる習慣や方法、能動的な態度やそれを支えるスキルを身につける教育への教員側のパラダイムシフトが必要である。また、社会のグローバル化の中で英語力の向上に加え、地球的視野、世界の多様性の認識といったグローバルセンスが求められている。

【これまでの取組、実績・成果】

<取組>
 本事業の中心となる取組は、1年生の必修科目「AL入門」の開講、それに続く全4学科2、3、4年生の学生約500名と全ての専任教員63名による、自立、協働、創造の力を養うことを目的とした学科学年横断型PBL科目「Co+work(コープラスワーク)」(必修科目)の開講である。Co+workでは、全教員が担当し、テーマ相互検討会の導入、教員8人組による意見交換会など、教員相互の授業運営に対する学び合いも促されている。また、この科目の導入を契機に、すべての学科でPBL型科目をさらに増加させるためのFDを計画する。本取組の特色としている学生の感情把握については、オリジナルのふりかえりシートを用いて実践し、分析結果を国際学会で発表、公開する。取組の評価として、学生のCompetencyの変化をPROG試験を用いて実施する。
■「アクティブラーニング入門」「Co+work」の実施
■ 教職員勉強会を定期的に開催
■ 教職員を学外研修会・勉強会へ派遣。AL先行事例などを視察
■ 感情フィードバックに関するふりかえりシートの運用
■ 学内AL実践調査、使用状況調査
■ 卒業生追跡調査の実施
■ 外部評価として有識者懇談会を開催
■ 自立、協働、創造の能力を養成するためのルーブリック(「Co+work」向け)を開発し運用
<実績・成果>
 本取組の実績は、1つは「自立・協働・創造」の能力養成に主眼を置いたPBL型授業科目の設置およびそれによる学生の能力向上である。2つめに、教員相互の授業運営に対する学び合いを促す仕掛けの導入による授業力向上である。教職員を対象とした教授法勉強会では、お互いの授業を見合う場をつくり、教員が主体的に、授業改善を行ってきた。本取組で特色としている学生の感情把握については、新たに開発したふりかえりシートを用いて実践し、分析結果を国際学会で発表、公開した。2016年度末には、講義形式の授業およびPBL授業( AL入門、Co+work) を受けた学生のCompetencyの変化をPROG試験を用いて実施し、全学生へ学級担任から面談によるフィードバックを行った。分析の結果、図に示すように、これまで学年進行に伴い変化の無かったCompetencyが明らかに伸びており、特に4年生の成長が大きく、同年齢の大学生のCompetencyを上回る結果を得た。

【今後の取組の計画】

<取組の計画>
●入学から卒業までの一貫したイノベーション人材の育成
 社会変化に対して、受け身での対応ではなく、自らの意思を持って他者と協働しながら学び、自らの頭で考えることができるイノベーション人材を15歳から育成する。そのために、入試制度の改革(具体的には、推薦入試にグループワークを導入)と、これまでの知識量の伝達を重視する教育から学生の興味関心の喚起、必要な知識の自己修得力、思考力、実践力を総合的に育てるカリキュラムに変革する。

【本取組における成果と社会へのインパクト】

●学生のコンピテンシーを高める教育手法として、異なる専門分野かつ異なる学年を混合させて行うPBLの手法、ルーブリックと成績評価方法、テーマ決定方法、ふりかえりシート、を本取組で開発し、実施3年後の学生の大幅なコンピテンシー向上を成果として得た。今後、多くの教育機関に、本手法が参照され、実践されることが期待される。また、本取組において、学生の感情に焦点をあて、教員に授業改善のフィードバックを掛けていく方法についても、これまでにない着眼点であることから、新たなALの授業手法として波及効果が期待される。

【本取組の質を保証する仕組み】

<報告書の発行および外部評価>
 毎年、外部有識者による有識者懇談会を開催し、取組の成果及び次年度の計画について、評価を受ける機会を設けている。また、事業報告書を作成し、取組内容について振り返り、学内外への報告を行っている。
具体的な実施計画における指標 2014年度
(起点)
2017年度
(実績)
2019年度
(目標)
Abilityを養うALを導入した授業科目数の割合(%) 100% 100% 100%
Competencyを養うALを導入した授業科目数の割合(%) 5% 11.7% 20%
Abilityを養うAL科目のうち、必修科目数の割合(%) 70% 70% 75%
Competencyを養うAL科目のうち、必修科目数の割合(%) 100% 100% 100%
Abilityを養うALを受講する学生の割合(%) 100% 100% 100%
Competencyを養うALを受講する学生の割合(%) 100% 100% 100%
学生1人当たりAbilityを養うAL科目受講数(科目)割合(%) 100% 100% 100%
学生1人当たりCompetencyを養うAL科目受講数(科目) 5科目 10科目 15科目
Abilityを養うALを行う専任教員数(%) 100% 100% 100%
学生1人当たりのAL科目に関する授業外学修時間(時間) 8時間 12.7時間 20時間

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