県立広島大学 アクティブ・ラーナーの育成に向けた組織的な教育力向上の取組
テーマⅠ「アクティブ・ラーニング」
事業期間:2014年度~2019年度
【取組の概要】
県立広島大学のAP事業は、「生涯学び続ける自律的な学修者(アクティブ・ラーナー:ALer)」の育成を目的とした授業方法の見直し・改善を進め、行動型学修(教室外での能動的な学び)と参加型学修(教室内での能動的な学び)を軸とする「県立広島大学型アクティブ・ラーニング(Campus Linkage Active
Learning:CLAL)」の推進に重点的に取り組む。あわせて、ファカルティ・ディベロッパーの養成と組織化、学修支援アドバイザーによる学修支援、学修成果の可視化方策の検討といった、CLALの推進とその効果測定を支える学内の組織・制度面の一体的な整備に取り組み、「体系的な教育プログラム-授業改善-自己評価システム」を一連のものと捉える教育改革を推し進める。さらに、高大接続改革を見据えた、広島県教育委員会や県内高等学校との連携を強化し、公立大学としての教育改革及び高大接続のモデル化を目指す。
【取組のポイント】
➢アクティブ・ラーニング導入・実践に係る経費支援
➢ファカルティ・ディベロッパー(FDer)の養成と、FDerを中心とした組織的教育改善
➢学修支援アドバイザー(SA)の養成と、教職員との協働
➢学修成果の可視化方策の検討
➢県内高等学校と連携した高大接続改革の推進
【キーワード】
「ファカルティ・ディベロッパー(FDer)」、「組織的教育改善」、「行動型学修」、「教・職・学の協働」、「授業ピアレビュー」、「高大連携」
【人材育成目標】
県立広島大学は「地域に根ざした、県民から信頼される大学」を基本理念に掲げ、教育・研究・社会貢献に取り組んでいる。2014年度には、主体的に考え行動し、社会で活躍できる学生を育成するための指針となる「全学人材育成目標」(下記)を定めた。
県立広島大学は、主体的に考え、課題解決に向けて行動できる実践力と豊かなコミュニケーション能力を備え、幅広い教養と高度な専門性に基づいて、高い志とたゆまぬ向上心をもって地域や国際社会で活躍できる人材を育成します。
【教育上の課題】
2005年の3つの県立大学の統合による開学以来、県立広島大学は次の教育上の課題を抱えていた。
• 授業に対する学生の満足度が90%を超えている一方、授業外学修時間は伸びず、学生の主体的学びを引き出せていない。
• 広島県内にそれぞれ100km離れた3つのキャンパスを抱えており、キャンパスを越えた学生の交流が十分ではない。
【これまでの取組、実績・成果】
<取組>
学生をアクティブ・ラーナー(ALer)として育成するため、本事業では、「行動型」及び「参加型」の学修を軸とする県立広島大学型アクティブ・ラーニング(CLAL)の推進に取り組む。具体的には、CLAL推進を支える次の5つの取組を一体的に推進し、着実に改革を進める。
① アクティブ・ラーニング(AL)実施のための経費支援や学修環境の整備を行い、ALの導入など授業改善の試行を促 進する。
② AL実践や教育改善を牽引する「ファカルティ・ディベロッパー(FDer)」を養成し、組織的な教育改善を進める。
③ 「学生による学修支援」を役割とする「学修支援アドバイザー(SA)」を学生の中から養成する。SAはFDerと協働
して学修支援に取り組み、活動を通じて自らもALerとして成長していく。
④ ALerとしての学生の成長を把握するため、ルーブリックの開発など学修成果の可視化方策を検討する。
⑤ ALを核とした高大接続の在り方の模索するため、県内高等学校との連携を強化し、高大接続改革の推進を図る。
■事例1 「行動型学修実践支援制度」
県内各地をフィールドとした学外学修や、キャンパスを超えた学生交流を推進するため、授業内においてキャンパス外へ移動する学生の移動支援を実施。FDerの担当授業を中心に、従来にはない体験的な学びが開発され、2017年度末までに47件の挑戦的な取組が実施されるなど、授業改善が加速した。
■事例2 「『教員・職員・学生』の協働による授業ピアレビュー」
FDer養成研修の一環として、2017年度からFDerによる授業ピアレビュー(授業公開・参観)を開始し、授業改善の促進を図った。初期はFDer教員どうしの参観が主であったが、非FDer教員やSA、事務職員にも参観が広まるなど、第3者の意見を取り入れた授業改善を行う制度・文化面の下地を構築できた。授業を公開したFDerからも前向きな意見が聞かれるなど、良い影響をもたらしている。
■事例3 「高大接続改革の推進」
広島県立の大学として、県内の高等学校との「人材育成」の接続を強化するため、広島県教育委員会及び県内高校の協力を得て、高校と大学が相互に教育の理解を図るための取組を開始した。
2016年度からは、県内高等学校の教育研究・実践合同発表会へ参画し、大学の教育実践事例を発表。高校関係者と情報共有を図ることができた。
2017年度からは、県内高校への授業参観を実施。高校の授業実践現場を知ることで、高大接続の在り方について議論を深めた。
<実績・成果>
・行動型学修の推進により、キャンパスを越えた学生の交流が活性化し、コミュニケーション能力などの汎用的能力が向上した。
・授業ピアレビューを通じて、教員の授業改善への意識が向上した。また、職員及びSAの参画により、大学が一丸となって教育改善に取り組む雰囲気が醸成された。
・高等学校との連携が加速し、高校でのAL実践の理解が深まるなど、ALer育成へ向けた相互理解が進んだ。
【今後の取組の計画】
AP事業において実現した各取組を、事業終了後も継続していくための制度的整備や、教職員の一層の意識醸成に取り組む。
・これまでの行動型学修の成果を整理・分析し、効果があった取組については、必要に応じて補助金終了後の継続的な実践支援を検討する。また、そのための制度整備にも着手する。
・FDerを中心とした組織的な教育改革は、これまで着実に成果を上げてきた。今後は、AP事業後の継続的な改革実施を見据えつつFDer養成の在り方を検討し、研修体系の整備に着手する。また、大学教員としての資質向上を目的としたティーチング・ポートフォリオの普及・拡大にも努める。
・ALer育成のための人材育成という観点から、「教・職・学」の協働を加速する。具体的には、授業ピアレビューの活性化や、教員・職員・学生が教育について意見交換する場を設けていく。
・これまで実現してきた高大連携の取組を継続し、高大接続の改革につなげる。
・学生のALer としての成長の可視化を目的として開発を進める「ALer自己評価ルーブリック」について、全学的な導入を進めるとともに、改良のための検討も重ねる。
【本取組における成果と社会へのインパクト】
●行動型学修の推進により、異分野の学生が協働して地域課題解決に取り組む学びの環境を整えた。これは、地域の教育力を活用した人材育成のモデルとして波及が期待できる。
●組織的なFDer養成と、FDerを中心とした改革推進は、教育改善に対する学内構成員の意識を高め、FDerが他の教職員や学生(SA)と協働して教育改善を進める組織的基盤を構築した。これは、FD推進の新たなモデルとして波及が期待できる。
●高大接続改革の推進により、県立高等学校との教育実践に重点を置いた連携を一層深めることができた。これは、公立大学による新たな高大接続モデルとして波及が期待できる。
【本取組の質を保証する仕組み】
AP事業推進部会の主導のもと、FDerが4つの役割毎にワーキンググループを組織し、改革を推進している。各グループの事業進捗は工程表により管理され、目標や進捗状況を部会や他グループと密に共有しながら連携を図るなど、一体的な事業推進に努めている。また、毎年度に一度、外部の有識者を招聘して事業進捗について評価・助言をもらう「AP評価委員会」を開催している。評価委員会で得られた評価は、AP事業推進部会などの学内会議で報告・共有するほか、次年度計画に反映させ、事業改善につなげる。
具体的な実施計画における指標 |
2014年度
(起点)
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2017年度
(実績)
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2019年度
(目標)
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ALを導入した授業科目数の割合 |
66.9% |
67.2% |
70.0% |
AL科目のうち、必修科目数の割合 |
45.4% |
51.2% |
70.0% |
ALを受講する学生の割合 |
84.7% |
89.8% |
100.0% |
学生1人当たりAL科目受講数 |
ー |
7.5科目 |
8.0科目 |
ALを行う専任教員数 |
38.4% |
63.9% |
60.0% |
学生1人当たりのAL科目に関する授業外学修時間 |
ー |
週8時間 |
週16時間 |
全学共通教育 キャンパス間(もしくは地域) 移動実践科目受講者数 |
98人 |
309人 |
300人 |
人間文化学部学部内授業公開科目数 |
6科目 |
49科目 |
45科目 |
経営情報学部フィールドスタディー実践科目群に 包摂する科目の受講者数 |
106人 |
497名 |
100人 |
生命環境学部フィールド科学科目の受講者数 |
152人 |
253人 |
250人 |
保健福祉学部学修ポートフォリオ導入率 |
20% |
27.6% |
50% |
授業公開実施科目数 |
23科目 |
220科目 |
40科目 |
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