大学教育再生プログラム(AP) テーマⅠⅡ複合型

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大阪市立大学 OCU指標を用いた多様な学修成果の総合化と その活用スキーム構築による卒業時の学修成果の質保証と向上

テーマⅤ「卒業時における質保証の取組の強化」

事業期間:2016年度~2019年度

【取組の概要】

 本取組は、中教審答申にある学生の主体的学びを重視した学士課程教育の構築を進める中で、総合大学である本学の多様な学生すべてに共通に求められる学修成果と、各学位プログラム特有の学修成果両方の、質的および量的な直接評価(成績評価等)を「OCU指標」に総合し、他の間接評価指標と合わせて活用することで、学生・教員・大学がそれぞれ学習や教育実践・カリキュラムの改善に役立て、卒業時の学修成果の質保証につなげようとするものである。この「OCU指標」とその「総合活用スキーム」は、個別の教育・学修目標にもあわせた活用や応用が可能な汎用性の高い総合指標化ツールとスキームであり、これまで本学において一体的な把握が困難だった各学部学科の学修成果の多様性にも対応しつつ、全学で目指す一定の学修成果達成及びその質保証に役立てるものである。

【取組のポイント】

➢総合大学における多様な学問分野を包括し、卒業時はもとより学修途中段階での学修成果をOCU指標としてわかりやすく可視化
➢OCU指標と間接評価指標の総合的活用による学生の自律的能動的学修活動支援と学修成果の質の向上をはかる
➢アクティブラーニング型の教育実践を含む組織的な教職員のFD・SDと教育改善の実施
➢3ポリシー(AP、CP、DP)にもとづく教育の点検・評価・改善
【キーワード】
「OCU指標」、「学修成果の総合的把握」、「総合活用スキーム」

【人材育成目標】

 大阪市立大学は、8学部10研究科の多彩な学問分野にわたる総合大学として、国際的かつ個性的で多様な研究の場を活かしながら、現代人として必要な基本的教養の修得と国際感覚の練磨をめざした教育を行うとともに、専門知識と総合的知識の双方を基礎にして物事を思索し、理解力、洞察力、実践力、指導力、解決力および品性を兼ね備えた人間の育成を目指している。

【教育上の課題】

 8学部を擁する総合大学である本学では、相対的に学部間の独立性が高く各学位プログラムでの取組が個別の属性を持ち多様なため、本学が全学的に掲げている教育目標や学士課程全体を通した学修成果に対して、各科目がそれぞれどの程度対応づいており自分がどの程度学修できているかが科目を履修した学生にわかりにくく、また、様々に行われている教育上の取組を全学的に把握しにくいというカリキュラム上の課題がある。また、既存の調査結果(2014年度実施)から、学生の学修姿勢に幅があることが明らかになっており、自律的能動的学修者の育成を一層推進していく必要もある。
 それらを解決するために、多様な学生すべてに共通の学修成果と、各学位プログラム特有の学修成果両方についての質的・量的な直接評価を統合する指標の開発を行い(「OCU指標」開発)、自律的能動的学修支援とそれを促す教育支援を併せて活用することで、全学的な学修成果の把握と質保証に取り組むことが必要である。すなわち、同指標開発と自律的能動的学修・教育支援および間接指標の活用により、学生が自己の学修状況や自身が希望するキャリアに必要な課題を把握し、自律的能動的に学修すること、および教職員が学修指導やカリキュラム改善を行うことを容易にし、大学全体としての学修成果の質向上と卒業時の質保証を一層促す必要がある。

【これまでの取組、実績・成果】

<取組> 
■教育改革の実効性を高める取組実施体制の構築:学長のリーダシップのもと、ステアリング委員会、AP事業プロジェクト委員会と4つの推進チームを組織し、本事業の取組と全学的な教育改革とが連動できる学内体制を構築、取組を推進している。
■OCU指標の開発と段階的導入:本学経済学部において活用実績のあるPE(Practical Economist)指標をもとに、全学DPに基づいた「OCU指標」を考案・開発した。2018年度には経済学部で先行導入、2019年度には全学部で導入する。
■自律的能動的学修者の育成のための学修支援推進室(通称:OCUラーニングセンター)の開設:学生の自律的能動的学修促進支援および自律的能動的学修を促進する授業支援を目的とした「学修支援推進室」を開設し、SA/TA/PD/教員/職員などの複数の異なる立場の者が、既存の学生支援組織と連携しながら協働で、学内のニーズに基づいた様々な取組を実施している。具体的には、学修相談(一般学修・英語・数学)、自主学修教材「学びのTips」の開発、セミナーを活用した学修・教育支援の実施等。
■自律的能動的学修者のモデルとなるTA/SAの育成:学生の立場から本学の教育に参加・貢献するとともに、自らが自律的能動的学修者となるような学生の育成と組織化を図っている。SA(スチューデント・アシスタント)制度の新設にあたり、SA業務のマニュアルや研修プログラムを開発した。
■間接評価となる学生・教員調査の実施:直接評価であるOCU指標と併せて学修・教育状況を点検評価するための学生調査および教員調査を実施している。
■組織的FD・SD活動:組織的で多様なFD・SD企画による、学内外での教育に関する情報の共有と議論の場の提供を行っている。
<実績・成果>
・OCU指標の開発と活用のためのシステムの構築(経済学部での先行導入)
・学修支援推進室をハブとした学内の学生支援組織間の連携強化
・SA制度の新設とTA/SA育成プログラムの開発
・自主学修教材「学びのTips」の開発・配布・活用
・学生調査(2016年度:上級生調査、2018年度:1年生調査)、教員意識調査(2017年度)の実施
・全学FD事業を通じた学内外への取組の周知

【今後の取組の計画】

<取組の計画>
■OCU指標の本格的運用が開始されるため、これに連動したOCU指標を活用した学修相談・教育支援を本格化させるとともに、点検作業を通じたカリキュラム等の改善を行う。
■学修支援推進室で行っている各種取組を、学生自身によって自律的に進めることのできる体制整備、および学生主体の学修関連活動のより一層活性化を進める。
■各研究科等と全学とで個別に実施されていたFD・SDの実施体制の見直しを進め、全学的組織体制のもとで、教育改善及びFD・SD活動の取組を効果的に実施する。
■学修支援推進室を恒常的な全学的教育体制に位置づけていく。

【本取組における成果と社会へのインパクト】

●「OCU指標」の開発: GPAと一致した明快で汎用性の高い「OCU指標」は、他大学においても大学のカリキュラムの独自性や特徴を損なうことなく導入可能である。
●自律的能動的学修者の育成体制: FD活動に取り組むプロセス自体が、異なる他者と協働し、中心となって問題解決に取り組むことができる学生の育成を促す仕組みは、他大学でも構築可能である。
●自主学修教材「学びのTips」は、他大学等でも活用可能である。
●学内外への広報スキル:学生の行動分析に基づく広報やHPの開設により、学内外に対して取組や成果等の普及が期待できる。
●学内外に開かれた多様なFD・SDの実施:教育改善に関する情報共有と議論の場としての多様なFD・SD企画の開催とその内容のオンライン上や誌面上での公開等により、多様な取組や課題解決の方法の幅広い普及が期待できる。
●相互参照と対外PRを可能にする情報発信ネットワークの形成:関西大学・大阪府立大学との3大学合同シンポジウム、テーマⅤの地域別研究会の開催等、共通した課題に取り組む大学等が共同で情報発信に努めることで、より効果的な事業および取組の成果等の普及が期待できる。

【本取組の質を保証する仕組み】

■外部評価委員会の設置:卒業生・企業関係者・高校関係者・他大学教職員・自治体関係者からなる「外部評価委員会」を設置し、定期的に評価を受けることで自己点検と客観的な視点による柔軟な事業運営が可能となる。
■「教育評価人材データベース」の構築:外部評価委員をはじめ、教育評価の観点をもつ識者のデータベースを構築し、定期的に本事業の取組について情報発信することで、取組の視覚化・PRや評価者の助言を受けやすい開かれた事業運営に努めている。
■学内外での報告・情報発信:上記の開かれた多様なFD・SDにより、学内外の多様な人々から意見を受ける機会の創出に努めている。
具体的な実施計画における指標 2016年度
(起点)
2017年度
(実績)
2019年度
(目標)
学生の成績評価
(在学中の総合GPAが1.0未満の成績不振者の割合)
7.2% 5.5% 6.9%
学生の授業外学修時間 7.5時間/週 7.8時間/週 10時間/週
進路決定の割合 91.5% 89.4% 92.4%
事業計画に参画する教員の割合 7% 10.1% 80%
質保証に関する FD・SD の参加率 54% 80.7% 65%
卒業生追跡調査の実施率 0% 0% 7%
学生の退学率 4.3% 3.5% 4.0%
「大学教育に満足している」学生の割合 63.0% (84.3%)*1   70.0%
学修ポートフォリオの利用率 14.0% 14.3% 100.0%
養成能力配分のシラバス上での 数値提供 1学部*2
(演習科目のみ)
1学部
全学科
検証段階
卒業時の「OCU指標」使用率 13.0% 14.8% 13.0%
学修成果評価結果を学外者も含めて共有する機会 0回 1回 1回

  *1 代替指標での測定 *2 PE指標の数値提供