大学教育再生プログラム(AP) テーマⅠⅡ複合型

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東京外国語大学   学修成果の可視化と質保証

テーマⅤ「卒業時における質保証の取組の強化」

事業期間:2016年度~2019年度

【取組の概要】

 在学時に何を学び、卒業時にどのような知識・能力・技能を獲得することができたのか、学修成果の可視化とその質保証に向けて取り組んでいる。
1)ディプロマ・ポリシーにおいて、卒業までに身につく力として規定している「言語力」、「専門力」、「行動力・発信力」のそれぞれに関し、その達成度を示す客観的な指標を定める。
2)上記の達成状況を学務情報システムと連動したeポートフォリオ「TUFS Record(通称:たふれこ)」で可視化する。
3)「TUFS Record」を通して、学生の省察を促し、自身の強みと今後の課題を明確にする。
4)「TUFS Record」に蓄積された情報に基づき、就職活動時には「学修活動履歴書」を、卒業時には「ディプロマ・サプリメント」を発行する。

【取組のポイント】

➢言語能力の客観的評価(CEFR-J)の実施
➢専門力、行動力・発信力の指標化
➢企業ニーズの把握
➢教育活動における「TUFS Record」の活用
➢就職活動における「学修活動履歴書」の活用
➢卒業時におけるディプロマ・サプリメント(日・英両言語)の発行
【キーワード】
「CEFR-J」、「TUFS Record」、「振り返り」、「学修活動履歴書」、「ディプロマ・サプリメント」

【人材育成目標】

 東京外国語大学は、世界の言語とそれを基底とする文化一般につき、理論と実際にわたり研究教授し、国際的な活動をするために、必要な高い教養を与え、言語を通して世界の諸地域に関する理解を深めることを目的としている。
 本学では、国際的な広い視野と優れた言語運用能力、世界の諸地域の文化と社会に関する深い知識を備え、異文化間の相互理解に寄与し、日本と世界を結ぶ人材、地球的課題に取り組むことのできる人材の養成を目指している。
 こうした人材養成目標を踏まえて、本事業において「言語力」、「専門力」、「行動力・発信力」に関する達成度を示す客観的な指標を定め、教育効果の検証と教育改善を行う。

【教育上の課題】

 本学において、学生が学ぶ専門分野は多様であり、修得した言語能力にも差がある。また留学を含む学外での学修履歴は成績証明書などに十分に反映されていなかった状況を踏まえ、ポリシーにそった教育が、どのように学生の達成度の向上につながっているのか、評価・分析し、提示することが課題として位置づいてきた。
 そこで、ディプロマ・ポリシーにおいて、卒業までに身につく力として規定している「言語力」、「専門力」、「行動力・発信力」のそれぞれに関し、その達成度を示す客観的な指標を定め、達成状況が可視化されるよう、仕組みづくりに取り組んできた。

【これまでの取組、実績・成果】

<これまでの取組>
「CEFR-J 評価の実施」
 本学ではヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)に準拠した評価システムの開発を進め、CEFR-J基準を策定した。2017年度には本学27の専攻言語において全1~3年次生を対象に、評価を実施した。
「TUFS Recordの導入」
 学内外の多様な学修活動を記録するシステム「TUFS Record」を導入した。「TUFS Record」を通して、学生は自身の日々の成長過程を振り返り、課題を見つけることができる仕組みを整えた。
「学修活動履歴書とディプロマ・サプリメントの二段階方式」
 1年次からの学修活動が記録された「TUFS Record」は、学修成果として「学修活動履歴書」と「ディプロマ・サプリメント」に反映される。
 「学修活動履歴書」はOB・OG訪問や就職活動での活用を想定し、企業を対象に実施したアンケート調査結果を踏まえ、企業ニーズの高い項目を中心に記載がなされている。
 一方で、「ディプロマ・サプリメント」は学修成果とその質を分かりやすく、比較可能なツールで示す公的な証書として、卒業時に日本語・英語の両言語で発行する。
<実績・成果>
・言語能力の客観的評価の定着
・在学生に向けて「TUFS Record」に関する説明会を開催
・就職活動での活用を目的とした「学修活動履歴書」の配付
・日々の記録の入力と振り返りの習慣化

【今後の取組の計画】

<取組の計画>
1.教育活動における「TUFS Record」の活用 
 「TUFS Record」の教育活動における効果的な活用方法・場面に関して検討を重ね、学生の成長・変容につなげる。
2.卒業時におけるディプロマ・サプリメントの発行
 2018年度卒業予定者を対象に、ディプロマ・サプリメント(日本語版と英語版の2種)を発行する。在学中の多様な学修成果のうち、大学側が管理・把握している情報が記載される。

【本取組における成果と社会へのインパクト】

●CEFR-J基準については、学内での評価の実施蓄積が進み、言語能力の達成度が可視化されることの教育活動上の意義が確認されている。今後は、 CEFR-J基準が言語教育のスタンダードとして、外大連合を中心に、学外でも普及が期待できる。
●既にヨーロッパで活用が進む、学生が取得した「学位・資格の制度的位置づけ」を説明するための公的証書「ディプロマ・サプリメント」を、卒業時に、日本語・英語の両言語で発行する。ヨーロッパの書式に準拠した「ディプロマ・サプリメント」の発行は、国際通用性を担保した質保証の試みであり、他大学においても流用可能である。

【本取組の質を保証する仕組み】

 「言語力」、「専門力」、「行動力・発信力」のそれぞれに関し、客観的な指標を定め、達成度を可視化する仕組みを整えた。
―言語力:専攻言語として教授される27言語に関し、ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)をもとに本学独自の成果指標としてCEFR-J基準を定め、それによる評価を導入する準備を進めた。2017年度には、全1~3年次学生を対象に、各専攻言語に対するCEFR-Jによる評価を実施した。これにより言語能力の客観的評価の定着が進んだ。
―専門力:学生が選択し重点的に学んでいる専門分野の履修状況を可視化するため、全開講科目に科目名・専門分野を示す5区分7桁からなるAPコードを振り、その操作により履修状況と達成度(専門力GPA)を可視化する準備を整えた。学生は常時、「TUFS Record」上で自身の専門力を確認することができる。体系だった履修ができているのか、振り返ることを通じて、今後の履修計画に活用することにつながっている。
―行動力・発信力:学生の留学履歴やボランティア、インターンシップの活動歴を可視化するため、各部局それぞれが把握していたデータを「TUFS Record」上で一元的に管理できるよう、学内の体制を整えた。さらにその成果が国際社会に向けて分かりやすい説明となっているか、英語化にあたっては表現や書式の検討を重ね、「学修活動履歴書」及び「ディプロマ・サプリメント」に掲載する形式も整えた。また1年次学生より社会人力外部試験の受検を進め、学生の社会人力の形成について、入学時から卒業前(3年次)までの追跡を開始した。
 これらの取組によって、卒業時に発行するディプロマ・サプリメントにおいて必要な情報が提供される。学生が取得した学位・資格の制度的位置づけを説明するための証書「ディプロマ・サプリメント」は、EUで広く普及が進む書式に準拠し、日・英両言語で発行する。学位・資格の国際的通用性が担保されることを通して、本学卒業生の国境を越えた移動を支援する仕組みと体制を構築する。
具体的な実施計画における指標 2016年度
(起点)
2017年度
(実績)
2019年度
(目標)
学生の成績評価(GPA) 2.5 2.6 2.7
学生の授業外学修時間 6.5時間 7.1時間 14時間
進路決定の割合 93.1% 93.8% 100%
事業計画に参画する教員の割合 100% 100% 100%
質保証に関するFD・SDの参加率 76.1% 81.3% 95%
卒業生追跡調査の実施率 20.1% 22.4% 80%
「大学教育に満足している」学生の割合 70% 71.6% 85%
言語能力の被判定者の割合 11.6% 73.5% 100%
社会人力外部試験の受検者率 1.6% 23.6% 50%
企業アンケート調査実施数 50件 74件 60件