大学教育再生プログラム(AP) テーマⅠⅡ複合型

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東京電機大学 アクティブ・ラーニング、e-ポートフォリオ、汎用ルーブリックによる学修成果達成と可視化の取組

テーマⅠ・Ⅱ複合型

事業期間:2014年度~2019年度

【取組の概要】

 本取組は、本学の使命である「技術で社会に貢献する技術者」の育成に必須の知識・能力を修得させる教育体制構築と、その成果の可視化のため、下記4点に注力して実施するもので、未来科学部の活動を基とし、成果を全学に普及させることを目指している。
1.(教育枠組1) 教育の質保証体制実質化のため、汎用的能力(人間力)の評価ができるルーブリックを開発・普及
2.(教育枠組2) 授業外学修時間増加のための反転授業導入とその運用手法の開発・普及
3.(教育内容)  教育目標の知識・能力を学生に効果的に修得させられるPBLおよびアクティブ・ラーニング手法の開発・普及
4.(教員教育力) 教員教育力向上のための教員評価制度の構築

【取組のポイント】

➢汎用的能力(人間力)の評価に適した米国のVALUEルーブリックを基に、学修成果評価用の汎用ルーブリックを作成し、これを用いて科目毎にその目標達成度評価用の科目ルーブリックを作成し、各科目及びカリキュラム全体の学修成果の定量的可視化を可能とする
➢e-ポートフォリオ上の科目ルーブリックを用い、学修成果の達成度の定量的評価を実施する
➢授業時間外の自己学修による知識習得と、授業時間内のアクティブ・ラーニングによる深い学びを統合した反転授業、およびPBLの広汎な導入による、効果的な教育システムの導入・普及
➢教育力評価の項目を含む教員評価制度の導入
【キーワード】
「汎用ルーブリック」、「e-ポートフォリオ」、「反転授業」、「アクティブ・ラーニング」、「教員教育力評価制度」

【人材育成目標】

 本学未来科学部は、下記のような「プロの能力、未来を開く豊かな教養」を合わせ持つ、自ら問題を発見し解決する高度な技術者の育成を目標とする。
■未知の状況で力を発揮できる知性。
■広い視野にもとづき、社会に価値のあるものを創造する、認知能力、適応能力、コミュニケーション能力、設計能力。
■問題を認識し、解決するための、総合力と構想力。

【教育上の課題】

 本学ではこれまで、教育の目標を設定し、それを達成するための質保証体制や改善枠組、教育内容を整備してきたが、これらの教育プログラムが、設定した教育目標(「技術で社会に貢献できる技術者」に必要な知識・能力)の育成に有効であるかどうかについて、定量的に評価する方法が明確ではなく、各種の定量的学修成果評価手法の導入と、それによる学生の学修成果の達成度評価と、その結果の学生へのフィードバックによる学びの深化が急務であった。
 また、社会に貢献できる技術者に不可欠の汎用的能力を、従来の座学に比較してより効果的・効率的に育成するための教育法とされているアクティブ・ラーニングの導入・普及も急務であった。
 上記の教育枠組と内容を修得した教員も強く求められていた。

【これまでの取組、実績・成果】

<取組>
 学修成果の可視化で最も困難であった、汎用的能力の評価法として、汎用性に優れた米国のVALUEルーブリックを参照し、4水準で評価する汎用ルーブリックを作成した。これを基に、各科目固有の達成目標評価ができる科目ルーブリックを作成し、e-ポートフォリオに組込み、学生の目標達成状況の自己点検と、学修成果評価を可能とした。
 授業外学修を可能とする反転授業導入により、時間のかかるアクティブ・ラーニングを授業時間内に導入することが可能となり、学修時間の大幅増加と、効果的な教育の実施が可能となった。
 教員の教育力評価では、研究者情報データベースによる量的評価の他、シラバスに沿った教育実施、学生授業調査の結果に対する改善活動、学生の達成水準妥当性、をルーブリックにより質的評価した。
●事例
「基礎制御工学および演習(2単位)2年次必修150名受講」
 未来科学部ロボット・メカトロニクス学科の題記科目において、音声付きパワーポイントの予習ビデオによる自宅学修と、教室でのアクティブ・ラーニング(グループワーク)を組合わせた反転授業を14回実施し、予習の習慣化、知識の定着化による期末テストの点の向上が示された。大人数教室でのグループワークでは、グループ内での教え合いにより、全学生が演習問題を正解でき、大人数でも反転授業が可能であることが確認できた。
<実績・成果>
・反転授業の導入・普及により、学生の1週間あたりの授業外学修時間は25.1時間と目標の10時間を大幅に超えた。
・卒業時に修得すべき学修成果項目の達成水準を可視化したレーダーチャートを、e-ポートフォリオ上で学生が自己評価・確認できるシステムが完成し、運用が開始された。(次ページの図参照)
・本事業で開発した、汎用的能力の定量的評価用のルーブリック体系の構築法と使用法について、 JABEE-日工教(技術者教育認定機構-工学教育協会)ワークショップ第5~9回(2015-2017)、及び工学教育協会年次大会(2015-2017)で、他大学教員に普及。

【今後の取組の計画】

<取組の計画>
 反転授業、アクティブ・ラーニングに関しては、その定義を明確にし、2019年度には全科目に導入することを予定し、各教員にシラバスにその旨の記載を依頼している。
 学修成果の可視化については、科目ルーブリックを組み込んだe-ポートフォリオシステムを実際に学生に使用させ、学生の学びの振り返りと教員の授業改善のフィードバックに活用する予定である。
 これを利用した学修成果達成度評価システムは、アセスメント・ポリシーの全学的な設定の中に組み込み、全学波及させる予定である。
 ここで得られた各学生の学修成果の可視化結果は、卒業時および就活時に、社会に学生の学修成果を提示する手段(ショーケース型ポートフォリオ、ディプロマ・サプリメント)として活用する予定である。

【本取組における成果と社会へのインパクト】

●汎用的能力の評価用ルーブリックである「汎用ルーブリック」は、下記の科目ルーブリックの基としてJABEE-日工教ワークショップで他大学教員に解説しており、他学での流用・普及が期待できる。
●科目の到達目標達成度を科目ルーブリック等で評価し、これを集約して学修成果の達成度を可視化する「e-ポートフォリオシステム」は、他学での流用・普及が期待できる。
●学生の学修成果の可視化結果を社会に提示するショーケース型ポートフォリオシステムは、他学での流用・普及が期待できる。
●「基礎制御工学および演習」は大人数反転授業での授業外学修増加と理解向上の実現手法として、他学での普及が期待できる。

【本取組の質を保証する仕組み】

①全学的な教育改善の推進体制
 教育・研究担当副学長が統括し、教育・研究担当副学長、教育改善推進室室長、各学部からの教育改善推進室副室長、各学部長、各キャンパス事務部長等で構成される「教育改善推進室運営委員会」で、全学教育改善方針を纏め、学長が議長を務める大学評議会、大学調整連絡会議でオーソライズし、各学部長経由で各学部教学委員会が教育改善を推進。
②教育の質保証枠組とその運用
 4年間で修得すべき学修成果の目標は、社会が求め、学位の国際通用性を満足し、本学の使命と整合性ある具体的目標として、全学・学部・学科のディプロマ・ポリシー(DP) に記述されている。
 次にカリキュラムの編成方針としてのカリキュラム・ポリシー(CP)、及び学修成果の各目標の育成科目を示すカリキュラム・マップを設定している。また各科目のシラバスには、カリキュラム・マップで科目に割り当てられた目標を育成する教育内容が示され、学科のシラバスチェックの仕組みにより、科目の到達目標・授業外学修の内容と時間・成績評価法・科目の到達目標達成度評価法、の明示が検証される。
 シラバスに書かれた科目の目的・達成目標と実際の授業の合致は、授業アンケートにより検証される。
 学生毎および学年平均の学修成果達成度は、各学期末に、「e-ポートフォリオ」に組み込まれた、その学修成果を主として育成する科目の科目ルーブリックにより評価し、その時点での学修成果の各項目の達成度分布とこれまでの成長軌跡を、レーダーチャート(下図)で示し、学生の振り返りと、カリキュラム改善にフィードバックされる。
 このシステムを利用した卒業時の学修成果達成度は、今後、教育に対する社会的説明責任を果たすため、公表することが考えられる。
 このような、DPに示された学修成果の達成度の具体的な評価法は、今後本学で公表するアセスメント・ポリシーに組み込む予定である。
具体的な実施計画における指標 2014年度
(起点)
2017年度
(実績)
2019年度
(目標)
ALを導入した授業科目数 44% 77.7% 100%
ALを受講する学生の割合 100% 100% 100%
学生1人当たりAL科目受講数 8.3科目 13.3科目 20科目
ALを行う専任教員の割合 100% 100% 100%
退学率 4.2% 3.9% 3.7%
プレースメントテストの実施率 100% 100% 100%
授業満足度アンケートにおける授業満足度 73% 74% 75%
学生の授業外学修時間 7.1時間 25.1時間 12時間
学生1人当たりのAL科目に関する授業外学修時間 3.7時間 19.5時間 12.0時間